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右のほっぺたがジンジンと痛い。 大きなヘッドフォンで聴覚を遮断したまま、私はうつむいて最終電車に乗り込んだ。 サラリーマン、OL、カップル、学生グループ。 かなり遅い時間なのに車内はそこそこ混んでいた。週末だから、これからどこかに出かける人も多いのだろう。なんとなく浮き足立った雰囲気が伝わってくる。 “出て行きなさい。” 手すりに凭れて窓の外を眺めていると、さっきのお母さんの声が頭の中で反響する。ぼんやり視界が霞んで、慌てて目尻をぬぐっても、あふれ出した涙は止まらない。 こんなにたくさん人がいるのに、泣いている私のことを気にかけている人は誰もいない。視界に入るのは、楽しそうな笑顔のグループ。ケータイをいじるおじさん。退屈そうな女の人。私は一人ぼっちだ。 ヘッドフォンから流れる音楽は、私の今の気分に全く似つかわしくない、甘いボーカルのポップな洋楽。全然気分が乗らないのに、何故か止める気にはなれなかった。 音漏れしたって構わない。私はボリュームを最大限に引き上げて、黙って目的地へ到着するのを待つ。 実家の最寄り駅からたったの2駅が、とてつもなく遠く感じられた。 降り立った駅前はさすがに人気がなく、私は早足でタクシー乗車口へ向かった。運転手さんは、こんな夜遅くに一人でタクシーに乗り込む私をいぶかしげに見ていたけど、行き先を告げると特に追求せずに発車してくれた。 走り出した車の中、私の頭の中は真っ白なまま。自分が今置かれている立場とか、状況とか、考えようとしてもまとまらない。心が思考を拒んでいるかのようだった。 親に殴られたのなんて、初めてだったな。そして、よくわからなかった。私はそれほど、悪いことを言ったのか?ていうかそもそも、何て言ったんだっけ? (・・・だめだ。) 思い出そうとすると、頭にもやがかかってしまう。眠いのに、眠れない。何も感じられない。涙が止まったと同時に、感情まで麻痺してしまったのだろうか。・・・私、大丈夫かな? 「ここでいいです。」 大きな門扉の前でお金を払って、普段はあんまり使うことのない古風な鍵をバッグから取り出す。 私の今の住処――学生寮。 数時間前、今週末は実家に戻るね!と元気にここを出て行ったのが嘘みたいだ。 もうみんな寝ているだろうか。誰かの部屋に集まって、わいわいおしゃべりでもしているのかな。 あまり音を立てないように、そっとエントランスのドアを開ける。照明は最低限に絞られていて、物音はしない。 誰も起きていそうにない。一瞬ほっとした後、私の胸にいきなり寂しさが襲ってきた。思わずその場にうずくまる。 「・・・・栞菜?」 その時、小さな声とともに、肩に誰かの手が置かれた。 顔を上げると、薄暗い照明が見知ったその顔を照らし出していた。 「千聖お嬢様・・・・」 私は声にならないほど小さな掠れた声で、どうして、とつぶやいた。 「わからないわ。でも、待っていたの。栞菜が、戻ってくるような気がして」 まだ微かに痛むほっぺたに、お嬢様の小さな指の感触。哀れむでも問い詰めるでもなく、千聖お嬢様はただ黙って、キラキラと輝く瞳で私を見つめていた。 「お・・・じょぅ様、私・・・」 私は夢中で手を伸ばして、お嬢様の胸にすがりついた。急激に感情があふれ出して、とまっていたはずの涙がボロボロとほっぺたを滑り落ちた。 「私・・・お、お父さんも、おか・・・さんも、私のこと、嫌いにっ・・・なってしま・・・て」 「栞菜。」 抱きつかれるのが嫌いなはずなのに、お嬢様は優しく背中を撫でてくれた。優しいベビーパウダーの香りが私を包む。 私は激しくしゃくりあげながら、お嬢様に身を委ねた。 「わ、わたしなんて、いなくなればっ・・・私、どうすればいいのかっ・・・私は、両親とも大好きなのに・・・私、ひどいことっ・・・言ったから・・・嫌われて・・・・」 「栞菜、大丈夫よ。子供を嫌いになる親なんて、いないのよ。大丈夫よ・・・お父様も、お母様も、栞菜のことを、愛していらっしゃるわ。大丈夫・・・・」 耳元でささやくその言葉は、私の心に深く深く染み込んだ。 その場しのぎや口先だけの戯言なんかじゃない、本気のお嬢様の気持ちがそこにあったから。 「千聖のお部屋にいらっしゃい、栞菜。温かいお茶を入れてもらいましょう。」 やがて私の呼吸が落ち着いた頃、お嬢様はそっと体を離して立ち上がった。 部屋に戻る気持ちにはなれなかったから、私は導かれるままに、寮を後にした。 月明かりの下を、2人きりで歩く。いつもより大人びて見えるお嬢様の横顔は、今の私にとって、唯一の救いだった。 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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「今日はブルーが主役でしたっけ?」 「ええ。私、彼女が一番好きなの」 今放送している戦隊シリーズは“純情戦隊 キューティーレンジャー”という 女の子7人が“ドエーム”という敵に立ち向かう話。 ドエームはこの地球からヒット曲を吸い尽くし、音楽という娯楽を無くすのが目的で それを阻止しようと音楽が大好きなキューティーレンジャーが歌を武器に戦っていく。 その7人の中でお嬢様はキューティーブルーが好きなのだ。活発でトラブルメーカー。 でも、その明るさでメンバー内の空気を盛り上げてくれる。 ――私がお嬢様じゃなかったら、こんな感じだったかもしれないわね。 なんて言っていたことがあった。ちなみに私はグリーンが好きだったりする。 放送時間になり、二人並んでソファーに腰掛けた。 「あの子犬、可愛いわね」 「ラブラドールですね」 公園で子犬を見つけるブルー。 しかし家に連れて帰っても飼うことが出来ず、そのまま公園で飼い始める。 ある日、その公園にドエームが出現。メンバーの到着まで応戦するも手が出ない。 「あぁ、ブルーがっ!!」 「あっ、チッサーが飛び出していきましたよ」 ブルーが倒れドエームが追い討ちをかけようとした時、 “チッサー”と名付けられた子犬がドエームに向かって走って行く。 チッサーの走って行く姿にブルーが勇気付けられ、立ち上がった時にメンバーが到着。 ブルーを中心にした“僕らの輝き”でドエームを撃退する。 「いっさましい~ かっがやきのほうへ~♪」 「お、お嬢様。まだ終わってませんよ」 公園で子犬をこっそり飼っていたことがみんなに知られ、落ち込むブルー。 怒られると身を竦めるもオレンジを中心にみんながブルーを抱きしめる。 その後、ホワイトの提案により子犬はホワイトの家で飼われることに。 正式に“チッサー”と名付けられた子犬は尻尾を千切れんばかりに振って、 ブルーの顔を舐め回すのだった。 「うぅ。チッサー、良かったわねぇ」 「お、お嬢様。涙と鼻水が出てますよ」 お嬢様にティッシュを渡しながら自分も目頭を押さえた。 自分でも不思議に思うんだけど何で戦隊シリーズで感動してるんだろ。 ◇ ◇ ◇ 「お嬢様。朝食を取りに行きましょう」 「そうね。心配させてしまうわね」 少ししてお嬢様も落ち着き、私は朝食の話を切り出した。 「オレンジジャム、楽しみです」 「ウフフ。その後はたくさんお話しましょうね」 「もちろんです。その後はお勉強が待っていますよ」 「もぅ。なっきぃの意地悪! でも今日は頑張るわ。ブルーを見習わないと」 「キュフフ。その意気です」 「じゃあ、行きましょう」 部屋に来る時と同じ様に私の手を取ってリビングへと向かう。 日曜日の朝7時。私とお嬢様の少し幸せな一日が始まる時間。 「二人共、少し遅いですよ。さ、席にどうぞ」 「ごめん、めぐ。わー、すごく美味しそう」 「ごめんなさい。め…村上さん。じゃあ、なっきぃ。せーの…」 「「いただきます!」」 おまけ ノソ*^ o゚)<今日の話は第5話だケロ リ ・一・リ <以下が今まで放送した分のタイトルになります 第1話 誕生?! キューティーレンジャー! 第2話 寝るのがお好き? オレンジは天然娘 第3話 得意料理は枝豆カレー イエローは意外にも家庭的? 第4話 新聞を読んで世情の確認 早くもグリーンは苦労人… 第5話 子犬と一緒 心優しきブルーの秘密 ノソ*^ o゚)<ちなみに次回の話はというと リ ・一・リ <“第6話 携帯片手に何してる? ホワイトの株式投資” ノソ*^ o゚)<……タイトルからして内容が子供向けじゃないですよね リ ・一・リ <他のメンバーの誰一人として話についてこれないわね ノソ*^ o゚)<時代……ですかね リ ・一・リ <時代……でしょうね 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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三日目 裏側 トンッ。 テーブルに置かれた一皿の炒飯。 中島早貴作。人参をふんだんに使用した『埼玉のチャーハン』 「せ~~の」 「「「「「いただきま~~す!!」」」」」 小皿に各自で小分けして一斉に口へと炒飯を運んだ。 「型抜きを使って可愛さアップか…」 「緑色もいいけど橙色も彩りがいいね」 「私てっきりみかん缶のみかんでも使うのかと思ったよ」 「お嬢様に食べて頂くんだからそこまで冒険しないでしょ」 「……何だろう。いつか作ってきたのを試食するんじゃないかって気になってきた」 「……だ、大丈夫だよ。私達への愛もあるはずだから」 みかんチャーハンを作るかもしれない可能性に一抹の不安を感じてしまう五人だった。 「「「「「ごちそうさまでした~~!!」」」」」 「お粗末様でした」 三日目。『埼玉のチャーハン』 総合評価……10点中7点(持点一人2点) ノソ*^ o゚)<みかんチャーハン……作ってみるケロ♪ リl|;´∀`l|从;・ゥ・从州;´・ v・)(;・v・)ノk|;‘-‘)<試食しないから! 前へ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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「さ、栞菜。明日に備えて今日は寝ましょう。篭城は体力勝負なのよ。」 「体力・・・ですか?」 私が首を傾げると、お嬢様はなんとも微妙なスマイルで説明してくれた。 「私が部屋に篭るとね、寮の皆さんがいろいろな意地悪をするのよ。めぐ・・・村上さんも、味方だと思っていたら裏切られてしまったり。」 子供みたいにぷっくりほっぺたを膨らますのが可愛くて指で突っつくと、お嬢さまの唇からぷひゅっと空気が漏れた。 「それでいつも私が根負けして、1日篭城できたことはほとんどないの。でも今回は、栞菜がいるから戦えるわね。」 「はい、それはもちろん。みんなをギャフンと言わせてやりましょう、お嬢様!」 それから私達は、順番こにお風呂に入って(洗面所で待たされたから、覗いたら怒られた・・・)ベッドに入った。 もちろんこうして添い寝するのは初めてじゃないけれど、今日はわくわく感もひとしおだ。 「栞菜・・・あの、手をつないでもいい?」 珍しいこともあるもんだ。上目遣いでおずおずと手を差し出されて、つい嬉しくなってしまった。 「お嬢様♪」 「きゃっ!」 ふざけて覆いかぶさると、お嬢様は思いっきり体をひねって抵抗してきた。 「いいじゃねぇか千聖、ぐふぇふぇふぇ」 「もうっ・・・何をするの、栞菜!」 「いだだだ」 わき腹でもくすぐってみようかと手をわきわきさせていたのだけれど、意外に手ごわい。あっというまに変な関節技で仕留められてしまった。 「栞菜ったらひどいわ!」 「・・・調子コキました、すみません。」 追い出されるかと思ったけど、お嬢様はクローゼットから大量の枕を取り出して、あっという間にバリケードを作った。 「栞菜はこちら側で寝てちょうだい。千聖はこっち」 「ええっ!それじゃ手をつなげませんよ」 「だって、変な事しようとするじゃない!」 どうもお嬢様を見てると、私の中に眠るガチレズ栞菜が鎌首をもたげてしまう。困ったことだ。 「もー、わかりましたよぅ。」 これ以上刺激すると、本当に叩き出されかねない。とりあえず今日は、このままバリケード越しに添い寝することにした。 「・・・どうしても苦手なの。」 「え?」 しばらくの沈黙の後、お嬢様が小さな声で話し出した。 「強く抱きしめられたり、触れられるのが苦手なの。小さい頃から、私はだっこやおんぶを拒む子供だったみたい。私の家族はみんなスキンシップを好むから、両親には本当に心配をおかけしたわ。」 「それは・・その、何か、原因が?」 「いいえ。・・・・こういうのは、何て言えばいいのかしらね。先天的に、駄目みたい。」 なるほど、そういう話は聞いたことがある。生まれたばかりの友達の弟も、ママの抱っこが苦手だとか何とか。 「ごめんなさい、私。お嬢様の気持ちも考えずに」 「あ・・・いいの、気にしないで。私の妹も弟も、たまに顔を合わせると遠慮なくぶつかってきたり、べったりと甘えてくるから、これでもだいぶ免疫がついてきたのよ。」 顔と体は枕で隠したまま、お嬢様の小麦色の腕がニューッと伸びてきた。丸っこい指を握ると、安心したように力を入れ返してくる。 「手だけですか。」 「そう、手だけよ。」 手だけ、とやまびこするのが何だか楽しくて、2人で何度をも声を重ねて笑い合う。 そのうちにだんだんと睡魔が襲ってきた。今日は本当に慌ただしい一日だったから、やっと体の疲れに心が追いついてきたみたいだ。 「お嬢様?起きてる?」 「・・・」 返事がない。ふざけっこしてたらお嬢さまも疲れてしまったらしく、スピースピーと小さい寝息が聞こえてきた。 そっと体を起こすと、私の方を向いたまま、深く寝入った可愛らしい顔が目に入る。寮のみんなは、最近お嬢様は大人っぽくなったと口をそろえて言うけれど、寝顔はむしろ実年齢より幼く見える。 大人のようで、子供。子供のようで、大人。複雑な家庭環境がそうさせるのかもしれないけれど、本当に不思議な人だと思う。 「明日、頑張ってストライキしましょうね、お嬢様。」 つぶやいて、ぷっくりしたほっぺたにチュッと唇をくっつけた。・・反応がない。よかった、起きてたらいがいにたくましい御腕で殴り殺されてたかもしれない。 バリケードのすぐ下まで移動して、再びベッドに横たわる。つないだままの手に少し力を込めて、私も目を閉じた。 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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前へ そんなことを思っている僕に、なかさきちゃんが言った。 「ひとつお願いがあります。お嬢様にあまり気安く声を掛けたりしないで下さい。そういうことをされると周りの目もありますし、規律は守っていただかないと」 その有無を言わせないキツい口調。 うわー、嫌われちゃってるのかなあ。 熊井ちゃん、僕のことをうまく言ってくれなかったのだろうか(←実はちょっと期待していた)。 続けてなかさきちゃんが僕に言ったこと、それには耳を疑った。 「あと、嗣永さんの関係者だか何だか知らないけど、友理奈ちゃんを惑わすようなことはやめて下さいね!」 嗣永さんの関係者って・・・ なんだそれ? 誰が熊井ちゃんを惑わしてるって? この子は何を言ってるんだろう。 「ああ見えて友理奈ちゃんは優しいから、誰の言うことでもすぐ聞いちゃうんだから」 それじゃあ、まるで僕が熊井ちゃんをそそのかしてるみたいじゃないか。 なにかとんでもない思い違いをしていないか、彼女。 熊井ちゃん、僕のことをなかさきちゃんに何て言ったんだよ。 「友理奈ちゃんがかわいそう」 「は?」 「昔のことをいつまでも。そのことにつけこんで付きまとってくるって」 おいおい、さっきから何のことを言ってるんだ!? 全く意味が分からないことをなかさきちゃんが言う。 大体考えてもみてよ。弱みにつけこまれるとか熊井ちゃんのキャラじゃないでしょ。 もしも昔のことで脅迫されるようなことがあるとしたら、それはむしろこっちの方だよ。いくつネタを掴まれてると思ってるんだ! それだけでも心外なのに、彼女が続けて言った言葉、それは僕にとって正に晴天の霹靂だった。 「それに、お嬢様が親切なのをいいことに色々と情報を聞き出してるんだって。お嬢様を利用するなんて、最低!」 なかさきちゃんは親の敵でも見るような目付きで僕を睨む。 熊井ちゃん、この子に一体何を言ったんだよ。完全におかしな事になってるじゃないか。 なかさきちゃんは僕に対して完全に悪いイメージが定着してしまっているようだ。 「あとは間違いなくお嬢様の財産目当てで近づいてきてるね。なっきぃ、もっともっと怒った方がいいかんな」 腹立たしいのは、僕の目の前で栞菜ちゃんがこのように余計なことを言ってなかさきちゃんを煽っていることだ。 なんなんだ、この人の僕を挑発するような言動は。 「お嬢様も何でこんな人に気軽に話しかけられるんだケロ」 こんな人呼ばわりされてる・・・ でも、ここはしっかりと反論しておこう。 「でも僕はですね、昔から人当たりはいい方で知られてるんですよ。クラスの女子からも“カッコよくって話しやすくて”とよく言われてますし」 「その顔でカッコイイとかオメーそんなこと冗談でもよく言えるな。鏡見たことあんのか?今だって何だそのニヤケ面は」 もちろん、これは場を和ませようとボケてみただけなのだ。お約束のツッコミありがとう栞菜ちゃん。 頭の中の構造がどうなってるのかよく分からない彼女だが、栞菜ちゃんはやっぱり男子とのやり取りに慣れていて、こっちとしてもやりやすい。 なかさきちゃん、これで笑顔になってくれるだろうか。 だが、彼女には男子のそんな冗談も通じなかったみたいで、僕に初めて笑った顔を見せてくれるどころか、まるで品性下劣な男でも見るような顔で僕を見ている。 そこまで汚ないものを見るような目をしなくても・・・ でも、この表情いいなあ。 真面目な彼女からそんな目で見られること自体に快感を覚えそうにもなる。 しかし、ここまで貶められた扱いをされると、もう何か開き直ってわざと嫌われるようなことをしてしまいたい衝動にかられてしまう。 どうせ悪印象を持たれてるんだろ、もうヤケクソだ。 なかさきちゃん、覚悟。 「何で話しかけるかって、それは僕に惹かれるところがあるからじゃないですか。お嬢様にとって」 「はああぁ?」 「お嬢様は僕の言うことをいつも丁寧に聞いてくださいます。なかさきちゃんの言うことに対してはどうですか?」 「・・・・・・」 「そういえば昨日もお嬢様、なっきぃに細かく注意されたから不貞腐れてたね。まぁ、お嬢様の逆ギレは珍しくも無いけど」 「だって、それはお嬢様が・・・」 「なるほど。お嬢様のなさることをいちいち頭ごなしに注意とは。それではお嬢様がかわいそうですね」 「何だその勝ち誇った顔は」 軽くなかさきちゃんをイジってみました。栞菜ちゃんが話しに乗ってきてくれることも期待して。 男子特有の調子こいた発言に栞菜ちゃんのツッコミも決まって、上手くオチたんじゃないだろうか。変な感じになっていた空気もこれで一掃だ。 いいテンポのやりとりができた。栞菜ちゃんありがとう。 なんだかんだで栞菜ちゃんは空気を読んでくれるんだよな。 案外優しい奴なんじゃないか、有原。いいところあるじゃん。 今の流れで多少は打ち解けられたんじゃないかな。 僕に対して必要以上に警戒心を持たなくていいってこと分かってもらえただろうか? どうですか、なかさきちゃん。 ・・・僕はちょっと分かっていなかった。 なかさきちゃんが男子生徒のことをわかっていないように、僕もまた女子校の優等生のことを分かってはいなかったのだ。 そしてもうひとつ、有原栞菜という女の子の恐ろしさも分かっていなかった。 冗談を軽く受け止めてくれる栞菜ちゃんとは違って、なかさきちゃんは僕の発言を言葉通りの意味に真面目に捉えていた。 プルプルと震えている彼女、顔を真っ赤にして僕の言ったことに甲高い声で反論してきた。 「私はお嬢様のことを本当に真剣に考えているんです。それで私が悪者になったとしても、お嬢様の為になるならそれは本望なんだから!」 「さすがだかんな、なっきぃ。お嬢様の為になることが何といっても一番重要なことだからね、たとえその場は嫌がられたとしても。 なっきぃがそう思ってるのは、きっとお嬢様も分かって下さってるよ」 「栞ちゃんもそう思う? 分かってもらえて嬉しい」 「もちろん。私もそれをいつも実践してるんだから。私が毎晩している行為は全てお嬢様の為を思ってのry」 「本当? 栞ちゃんもそう思ってるなんて! 良かった。私だけが一人で張り切りすぎてるのかと思って悩んでたんだ」 「もちろん分かってるさ。でも男なんかには決して分からないだろうね、お嬢様のことを本当に思うってことがどういうことだか」 何だその勝ち誇った顔は。 もう一刻も早くこの場を立ち去りたいと思ってるのがありありと分かるなかさきちゃん。 彼女はツンとした表情で僕の前から去って行った。僕に次の捨て台詞を残して。 「嗣永さんにも言っておきますけど、あなた方はお嬢様に関わらないで下さい!!」 桃子さん? さっきもあったけど何で桃子さんの名前がいきなり出てくるんだ? 何の必要があって何を桃子さんに言うんだろう? なかさきちゃんは訳の分からないことを言う。混乱してるのかな。 結局、今日もなかさきちゃんに笑顔になってもらえなかった。 気が付けば、僕は栞菜ちゃんの挑発に乗せられて自爆してしまったということか。 彼女の方が一枚も二枚も上手だった。 意外と優しい奴、と思わされてしまったこと悔しすぎる。僕の一人合点もいいところじゃないか。 僕の言動は全て彼女の脚本通りの展開だったんだろう。僕は彼女の手のひらの上で踊らされてたのか。 しかも、僕の発言を利用して自分の行為の正当性もアピールしているようだ(毎晩何を実践しているっていうんだろう)。 なんて頭の切れる人なんだ。 栞菜ちゃん、恐るべし。 なかさきちゃんの後を追うように栞菜ちゃんが踵を返したときの、人を上から見下しているようなあのいやらしい笑い顔。 夕闇の中で見たその表情、しばらくは忘れられそうに無い。 次へ TOP
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前へ 「ねー、おかーさん!お菓子は?そろそろ友達来るからぁ」 「はいはい、あとで部屋に持っていってあげるから、そんな急かさないでよ」 ももとの電話の翌日、私は午前中から、キッチンに立つお母さんを急かし続けていた。 “明日、千聖連れて梨沙子んち行くね!ウフッ” もものやつ、こんなことを言っていた。 無理無理休日で家族そろってるし!弟うるさいし!と反論したものの、いつものウフフ笑いとともに電話は切れてしまった。 まあ、私ももぉ軍団一般人部門だからわかるけれど・・・ももは、一度決めたら絶対に譲らないし、来ると決めたら来るやつだ。 はっきり約束したわけじゃないから、時間までは読めない。でも、絶対来る。 こーゆーめちゃくちゃなとこ、ホント熊井ちゃんそっくり。これだからもぉ軍団は。私みたいに、もっと人の事情を考えて・・・ ぴんぽーん 「うわ、きた」 チャイムの音さえ、ふだんより3オクターブぐらい高いブリブリ仕様に聞こえる。 “すみませぇーん、みんなのアイドル・ももちですけどぉ!” 「・・・はいはい」 「あれ、友達って、桃子ちゃんなの?」 「んー、ももと、あと一人・・・。待って、今連れてくる。紹介するね」 玄関のドアを開けると、今日も今日とてツインテールに白リボンを結ったももが、ウフッと笑いかけてきた。 「・・・てか、その格好で大学も行ってんの?もういい年なんだからさぁ」 「はいはいはい!もぉは永遠の13歳ですよぉ~、おっじゃましまーす!」 人んちだっていうのに、ずかずかと上がりこんでくるもも。 「ったく・・・。あ、岡井さ・・・千聖、も、はいって?」 その後ろに隠れていた、おか、千聖に話しかけると、なぜか顔を赤くして私を見る。 「ちさと?」 「えと・・・あの、えと、今日はおじゃまフガフガ」 まるで、彼氏のおうちに遊びに来た女の子のようなリアクション。なるほど、こういう感じだから、舞ちゃんや有原さんが勘違い(なんでしゅと!)するんだ。 「・・・ウフフ。あの、今日はお招きいただいてありがとうございます。焼き菓子の詰め合わせをお持ちしたので、こちらよかったら御家族で」 「ありがとー」 すごいな。友達の家におみやげなんて、コンビニのお菓子かジュースぐらいしか思いつかない。いかにも高級そうな黒い紙袋に、よくわからない緊張感を覚える。 それにしても・・・私服の岡井さんも、一目でそれとわかるお嬢様らしさだ。 春物の薄いグリーンのワンピースに、小ぶりのカゴバッグとシンプルで上品な装い。さっきの一人祭りみたいなももとは対照的だ。この2人でうちまで歩いてきたのかと思うと、ちょっと面白い。 「さ、あがってあがって!」 岡井さんと連れ立ってリビングに戻ると、ももが私の弟とじゃれているところだった。 「だからぁ、きもいとか言ってるけどぉ、本当はもぉのこと可愛いって思ってんでしょ!」 「ないない!きもい!きんもいわー」 弟よ・・・その人に何を言っても無駄だから。鋼のハートなんで、彼女。 「おかーさん。紹介するー。そっち、ももね。ああ、知ってるか」 「おいっ、もぉの扱い雑だぞ梨沙子!」 「んで、こちらが岡井さんね。岡井さ・・・えっと、千聖。うちの家族。パパ、ママ、弟」 あんまし、こういう紹介役(?)は得意じゃないから、すごいぶっきらぼうな感じになってしまった。 だけど、岡・・・千聖は、上手く話をつないでくれた。 「はじめまして。岡井千聖と申します。いつも梨沙子さんにはお世話になって・・・」 ちょうど、昼食の真っ最中だった家族は、ああどうも、みたいな感じに、ラーメンをすすりながらぺこりと軽く会釈をした。・・・が、次の瞬間、パパが突然うっと咽せ始めた。 「ちょ、なにやってんの!」 「え、あ、お、岡、岡井さんって、○○製薬さんのおかおか」 「まあ・・・父を御存知で?」 聞けば、ちさ・・・とのパパの会社と、うちのパパのとこ(パパは銀行員なのだ)で、いろいろと取り引きがあるらしい。 「同じ学校とは聞いていましたが・・・いつもうちのアホが御迷惑をおかけして」 「・・・もう、上いこ!もも、ちさと!」 2人を急かして自分の部屋へ向かう背中に、「すっげー、この菓子、テレビでやってたぜ!1万円!」とか弟が叫んでいるのが聞こえて、げんなりする。 ほんと、異次元の存在なんだ・・・なんて、今更ながらため息がこぼれた。 次へ TOP
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十三日目。 トンッ。 目の前に置かれた夕食を見て、私は夕食を置いた張本人を見る事なく溜め息を吐きました。 中華スープとれんげが置かれた時点でもう分かり切っているもの……。 「……………」 「……………」 「め…村上さん」 「何でしょうか? 千聖お嬢様」 「今日はどちらの名産品なの?」 「今日は『神奈川のチャーハン』です。お下げしますか?」 「……いいえ、食べるわ。味付けに使用した調味料はご存知?」 「塩、胡椒、醤油、あとは……(やばい! 一昨日以上にやばい!)」 「あら? どうかした?」 「…11種類の調味料を使用したジャングルな味付け……みたいですよ」 め…村上さんの対応を軽く流しながら私は『神奈川のチャーハン』を頂く事にしました。 香りだけで体が食べる事を拒否しそうになってるのは気のせいかしら? (何故かしら? 一瞬、得意げな佐紀さんの顔が浮かんだ様な気が……) 川´・_・リ<えっ? 食べれますよ。私は美味しいと思いますけど 前へ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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「お嬢様、現代文の教科書はお入れになりました?」 「え?あ・・・忘れていたわ。ありがとう、栞菜」 お風呂あがり、まだほっぺが上気しているお嬢様が、私ににっこり微笑みかけてきた。 ハァーン! 午後22時15分。 就寝前、お嬢様の明日の準備を手伝いながら、私は幸せ気分に浸っていた。 もうかなり長い事、添い寝係をさせてもらっているけど・・・毎日こぉんなかわゆいお嬢様をクンカクンカしながら眠りにつけるなんて、最高の役職だと思います、マジで! 「・・・栞菜、ヨダレが出ていてよ」 お嬢様は少し眉をしかめて、私から体を遠ざけた。毎度の事だから、私の考えてることなんてお見通しなんだろう。 調子に乗って肩を抱いたり、耳に息を吹きかけたり、それどころかおpp(ryなど、前科多数なわけで。 だから、本日は少し趣向を変えてみることにした。 「失礼しました、お嬢様。準備が整いましたら、お声をかけてください」 「え?ええ・・・」 あえていつもみたいにベタベタせず、爽やかに微笑んでスッと立ち上がる。そのまま、ふかふかソファに腰掛けて、読みかけの文庫本を開いた。 お嬢様は時間割を確認しつつ、訝しげな表情のまま私を横目で伺っているみたいだ。 ――いかん、全然本に集中できないかんな。 617 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2010/04/15(木) 17 27 27.26 0 「あ・・あの、栞菜?」 「はい、なんでしょう?」 お屋敷の執事さん(メイドさんじゃないところがポイントだかんな!)のあの所作を参考に、にっこり笑って立ち上がると、お嬢様は若干後ずさりした。 「あの・・・?どうなさったのかしら?」 「・・・もうしわけございません、何か不手際がありましたでしょうか」 「あ、そ、そうではないのよ。でも・・いつもの栞菜と違うみたい」 ――ああ、静まれ俺の野性!! 今すぐギューッしたい気持ちに笑顔で蓋をして、「そんなことはありませんよ」と言葉を返す。 「お嬢様、もう明日の準備はお済みですか?それでは、就寝いたしましょう」 「ええ・・・」 前を横切る私を、お嬢様の視線が追いかける。何か罠があるんじゃないかって、顔に書いてあるのがまるわかりだかんな。 「どうぞ、布団にお入りください」 お嬢様側の布団をペロリとめくり上げると、私を凝視したまま、小さな体がおそるおそるそこに収まる。 続いて隣に潜り込んだら、一瞬ビクッと緊張したものの、スキンシップを図ろうとしない私に困惑しているみたいだった。 「では、電気を消しますね。おやすみなさい、お嬢様」 「あ・・・お、おやすみなさい、栞菜」 618 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2010/04/15(木) 17 28 22.12 0 薄暗くなった部屋の、お隣のベッドで、お嬢様が何度も寝返りを打ってもぞもぞしているのが気配でわかった。 大量のマクラのバリケードで表情は見えないけれど、寝息が聞こえてこないから、確実に目を開けて私を警戒している。 「・・・栞菜」 「・・・」 だから、あえて私は眠ってるふりをしてみせた。 「ねえ、寝てしまったの・・・?」 「・・・」 むくりと起き上がる気配。目を閉じて狸寝入りを続行していると、お嬢様の手が私の腕に触れた。 「・・・どうなさったの?今日の栞菜は、何だか栞菜じゃないみたいだわ。 私、いつもの栞菜のほうが好きよ・・・・」 「・・・・はい、録音完了♪グヒョヒョヒョヒョ」 私はパチッと目を開けて、私の顔を覗き込んでいたお嬢様の柔らかほっぺを両手でぷにっとつまんだ。 「え・・・・・・なっ!何でそa-0ekあ$ぅ4」“じ3;‘@フガフガフガフガ!!!」 一瞬間をおいて、お嬢様はベッドの縁ギリギリまで器用にピョーンと後退した。 にやにや笑っている私の顔で、自分がからかわれたということに気がついたみたいだ。 619 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2010/04/15(木) 17 29 46.76 0 薄明かりの中でも、小麦色のほっぺが紅潮していくのがよくわかる。 「ひどいわ、栞菜ったら!千聖をからかったのね!」 「ぶっ」 力いっぱいの顔面マクラ。最高だかんな! 「さっき録音したと言っていたでしょう?早く消しなさい、命令よ!」 「無理だぜ、千聖。さっきの千聖の告白は永久に消えないさ。しっかり録音(きざ)みこまれちまったからな・・・アタイのここ(心)に・・・」 「何を意味のわからないことを言っているの!千聖は怒って・・・もう、何をするの、やめなさい、命令よ!栞菜!どうして抱きつくの!」 思わぬ愛の言葉(?)に舞い上がった私は、いつもどおりお嬢様に飛び掛って、双方ぐったりするまで存分にプロレスを楽しむことになったのだった。 翌日、食堂で鉢合わせた舞様に「あんなのは告白のうちに入らないでしゅから。ケッ!」と威嚇されたのはまた別の話。 ――何で知っていらっしゃるんでしょう、舞様・・・・・。 TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -